国がDXを推進する背景：4つの国家的課題

日本政府がDXを国家戦略として進める背景には、いくつかの深刻な社会的・経済的課題があります。ここでは、特に重要な4つの要因について解説します。

１、少子高齢化と生産年齢人口の減少

日本は急速な少子高齢化が進行し、生産年齢人口（15～64歳）が減少しています。

1995年：約8,716万人

2022年：約7,484万人

2040年には約6,213万人に減少予測（出典：[国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口])

これにより、従来型の労働力依存型経営モデルでは維持できなくなり、DXによる生産性向上が急務となっています。

また、医療・介護分野でもデジタル技術（AI・ロボット）の活用が不可欠となり、社会インフラの維持に大きく貢献すると期待されています。

２、人手不足と有効求人倍率の上昇

労働市場では、有効求人倍率が継続的に高止まりしており、企業の採用難が深刻です。

2010年：0.52倍

2018年：1.61倍（バブル期を超える高水準）

2023年：1.31倍（出典：[厚生労働省 一般職業紹介状況（令和5年12月分及び令和5年分）])

DXによる業務の自動化・効率化（例：AIカスタマーサポート、クラウド管理システム）を進め、少ない人材でも最大限の成果を生み出す環境構築が不可欠です。

３、企業コスト増大と賃金上昇への対応

近年、日本の賃金は上昇傾向にあります。

2022年：前年比＋1.9％

2023年：前年比＋2.5％

2024年：賃上げ率5.10～5.33％（1991年以来33年ぶりの高水準）（出典：[厚生労働省 第3章 労働時間・賃金等の動向])

企業が生き残るためには、単なる価格転嫁ではなく、DXによるコスト最適化・業務効率化が求められます。

具体例：

• RPA導入による事務作業自動化
• AIチャットボットによる顧客対応の効率化
• クラウドシステムによるリモートワーク推進

４、「2025年の崖」とデジタル基盤の整備

経済産業省が警告する「2025年の崖」とは、古いITシステム（レガシーシステム）依存が引き起こすリスクのことです。

• 維持管理コストの増大
• IT人材不足による更新困難
• システム障害・セキュリティリスク増加

(出典：[経済産業省 DXレポート])

国としてもデジタル庁設立、マイナンバー制度推進など、行政のデジタル化を加速させ、企業のDXを後押ししています。

まとめ｜DXは日本の未来を左右する国家プロジェクト

• 少子高齢化、人手不足、賃金上昇、2025年の崖という4つの課題に対処するために、国がDX推進を強化
• 企業は生き残りをかけて、積極的なDX推進が不可欠
• DX推進により、日本は生産性向上・新しい働き方の定着・国際競争力の向上を目指す

DXは、単なる技術導入にとどまらず、社会全体を変革する力を持つ重要な取り組みです。今後も時代の変化に柔軟に対応し、より豊かで持続可能な未来を築くために、私たち一人ひとりがDXの本質を理解し、積極的に取り組んでいくことが求められています。